中村憲剛の2021年下半期振り返り&この1年で感じたこと(後編)
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中村憲剛の2021年下半期振り返り&この1年で感じたこと(後編)

川崎フロンターレnote部

そしてサッカー普及活動や講演、イベント出演ですが、こちらは今年に関してはコロナの影響もあり、登壇して直接皆さんの前に出てお話をするのではなく、オンラインがほとんどでした。これも状況に即した形に変わりましたね。自分が講演をする場所に伺って収録したものを配信したり、リアルタイムでオンライン配信したりと、本当にさまざまな形態でした。

内容は僕がこれまで経験してきたことをお話することがほとんどでした。プロ18年間で培ってきたもの、プロフェッショナルとは何か、壁を乗り越えるためにはどうすればいいか、サッカー観戦の仕方などなどテーマは先方の方の要望や希望に則したものでしたが本当に様々でした。あとはピッチ外のサッカー選手の取り組みとしてフロンターレでやってきた地域貢献活動のお話とそれによってサッカー選手として何を得たか。また、Jリーグとの取り組みをお話したり、皆さんに聞いてもらいました。

これらは現役時代にフロンターレでもやってきたことですが、引退してからはよりお話しするテーマや対象がかなり広がったと思います。サッカーに関するお話だけではなく、教育や子育てといったテーマについてお話しすることもありましたし、社会貢献活動についてお話しすることもありました。また、対象も親子や学生、就活生、先生など年代、職種さまざまでした。またフロンターレのスポンサー様の会社で話をしたり、Jリーグやサッカー協会関連の講演もありました。

サッカーの普及に関して言えば、実際にその立場になり、多くの現場でお仕事をする中で、日本のサッカーを広めたい、盛り上げたいという方たちの数はとても多くそして熱量があるなと感じました。ただ、その枠組み自体は狭くなっているのかなとも同時に感じました。メディアにしてもサッカーを専門に取り上げる番組が少なくなりました。代表戦ですら地上波で放送されないときもあります。ただ、その一方で発信の仕方が多様化して、僕自身も動画配信コンテンツをはじめとするネットメディアにたくさん出させていただきました。これもまた時代だと思いますし、より多くの人の目によりライトな形でサッカーに触れられる環境になってきているなと思います。子どもたちは動画配信メディアはかなりチェックしてますから。

ただ、これはメディア出演の項目と被るんですが、サッカーが好きな方は番組や試合を積極的にチェックしてくださるんですが、それ以外の方にサッカーの面白さや醍醐味を目の当たりにする機会が少なくなってきたことも事実なのかなと思いました。なので、OBとして皆さんの前に出る責任は重大です。

なので、運営や制作側の意図や目的を理解しくみ取ることも重要だと思います。現役時代は選手がそこまで考えなくても話すことはある程度許されましたし、皆さんに面白がってもらえた部分があったと思います。自由に動いていいから一発決めてこいという、ストライカー的な役割だったんですね。でも、今はそれだけではいけません。番組やイベント、講演の意図や目的を出演者の方達とどう出していくか。どうすれば1人でも多くの方にサッカーに興味を持ってもらえるかを意識しています。そこは現役時代よりもアンテナを張るようになりました。

自分がこういうことを話したいという思いがあっても、独りよがりになってはいけない。だからといって求められることを無難にこなすだけでは、つまらない話になってしまいます。そこは個性とバランス感覚のせめぎ合いです。また共演者の方たちもその都度変わるので、自分の良さを出しつつ周りの方々の良さも出さなければいけません。

サッカーでいうなら、全体を俯瞰しつつ試合の流れを読んで良いパスを出さなければいけないということです。現役時代に中盤でプレーしていたので、周りを見ながらゲームをコントロールし、より良いチームにするという考え方はある意味今も同じです。現役を引退しても立ち位置としては同じポジションに戻りつつあるという。何だか面白いですね(笑)。

この1年を冷静に振り返ってみると、2021年上半期は少し力が入りすぎていたかなと感じます。自分が自分がみたいな思いが強かったかなと。現役を引退した当初はプレーで表現できない分、この立ち位置でどう自分の個性を出していくかを考えましたし、別のところで張り切らなきゃダメみたいな感覚にとらわれすぎていたというか。でも上半期から下半期に進むにつれて、色々なものが見えるようになり、慣れてきた中で、もっと全体を見なきゃいけないなと思うようになりました。番組やイベントによってはそんなこと気にしなくていいよと言ってくれこともあるのですが、いろいろな方がいる中で少しずつ自分の役割や立ち位置、何をするべきかが見えてきたところがあります。

例えば「やべっちスタジアム」に出演したときは矢部さん(矢部浩之)がいらっしゃって、黒木さん(黒木ひかり)がいて、解説者として自分がいると。その時点でおのずと役割が決まってきます。さらにゲストの方が出演している回もあります。僕がひとりで解説するときとゲストの方がいるときとで話す配分を考えなければいけません。最初の方に話は戻りますが、やっぱりそこはどれだけ場数を踏むかだと思いますし、感性が求められるのかなと思いました。

でも40歳にして新しい世界に飛び込み、日々新しい現場に行くこと自体が今までの中村憲剛が経験してこなかったチャレンジでしたし、日々全力で取り組む中で、いろいろと試行錯誤しながらこの世界での中村憲剛の立ち位置を見つけていく。これは現役時代とは全く違う感覚でしたし、違う感覚の中で日々過ごすことは伸び代だらけなので、また今年も成長できたなと実感できました。その自分を実感することが新鮮で楽しいですし、本当に幸せなことです。

最初からすべてがうまくいくとは思っていませんでしたが、だからといってダメなことばかりだったと言えばそういうわけでもなく。日々全力で取り組む中で、うまくいったなとか、やっちゃったなという成功失敗の日々を積み重ねて成長していく点においては現役時代と全く一緒で、この世界で自分ができていること、できていないことを分析して、改善しながら次にトライすると。やることは違えども、見えるものは同じ。そこは変わりません。

そして一緒にお仕事をする方たちに仲間として受け入れていただき、より良い番組や企画を共に作るという意味ではサッカーと同じチームプレーだと思います。その結果みなさんが喜んでくれる姿や充実した雰囲気を共に共有できたことは、自分にとって大きな財産であり自信になりました。

本当にスペシャルな経験をさせていただいたルーキーイヤーだったと思います。

みなさん、ありがとうございました。

良いお年を。

中村憲剛


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