中村憲剛が2022年を振り返る【第4回・メディア編】
今回が最後の章になりますが、サッカーの普及活動やメディア活動についてのお話になります。
僕のピッチ外の活動としては生放送に生配信、講演や収録、撮影、取材等、おかげさまで2022年もいろいろな分野でお仕事を頂戴しました。中村憲剛にオファーしてくださったみなさま、本当にありがとうございました。
2022年では新しくJリーグ特任理事、それから新設されたフットボール委員会の委員を務めさせていただくことになりました。これは2022年の中ではかなり大きな出来事でした。18年間Jリーグでプレーし、Jリーグで育ててもらった僕としては、Jリーグに何か恩返しができたらと常に考えておりました。引退して2年目、新シーズンが始まるタイミングで野々村チェアマンよりJリーグ特任理事そしてシーズン半ばよりスタートしたフットボール委員会へのお誘いをいただきました。早くも力になれる機会を頂けたことはありがたく嬉しいものでした。
Jリーグ理事会では、ビジネスマネジメントも含めたJリーグ全体の話をします。ビジネスのプロの方もいる最終決定機構なのでピリピリした空気になるときもありますが、マネジメントの観点からすればそれは当然だと思います。重い案件もたくさんあって、そこで了承されれば世に出るいう流れなので。会議に参加していて、ふと自分はすごいところにいるなと思う時があります。誰もがJリーグを成長させたいと思って意見を交わす場所なので、ここでの時間はとても重要なものだと思っています。フットボール委員会は理事会とはまた違う雰囲気・規模であり、よりフットボールに近い話をする場所で、フットボール戦略や強化育成、制度に関する話をします。こちらは僕でも話せることが多いので、理事会よりは発言する機会が多いと思います。どちらも本当に勉強になりますし、Jリーグの更なる発展のために多くの方たちが関わっていることを知っていただきたく思います。理事会は月に1回、委員会は月2回ぐらいの頻度で行われていますが、今後も僕の経験の中で求められていることに応えられればと思っています。
JFA関連では2021年に引き続き、JFAロールモデルコーチとJFAグロース・ストラテジストを務めさせてもらっています(JFAロールモデルコーチに関してはJFAライセンス・ロールモデルコーチ編でお話しさせていただいたので割愛させていただきます)。その中で、今年はJFAのSDGsの取り組みやサッカーを通じた社会貢献活動「アスパス!」で中央大学とコラボして、JFAで「JFAパスポート」という新しいアプリを出したんです。JFA×中央大学「アスパス!協働プロジェクト」のワークショップで、中央大学の国際経営学部のゼミ生と「サッカー低関心層に関心を持ってもらい、JFAアプリを知って使ってもらうには」をテーマにグループディスカッションをしました。ここで、中大生の多くがサッカー低関心層で、実際に彼らから出る言葉の数々に打ちのめされかけましたが(苦笑)、逆にこれだけの学生が無関心なことは伸び代と同時に感じました。
そして「JFAパスポート」ですが、これまでバラバラだったサッカー情報を集約してアプリにまとめて、そこから日本サッカー協会情報を網羅できるように作られています。ファン、サポーターだけなくて、プレーヤー目線、レフリー目線、指導者目線、あとはサポートする保護者向けの情報が集約されていたり、イベントやムービーといったこのアプリでしか見られないコンテンツもあります。今回のワールドカップに合わせてこのアプリを起爆剤としてサッカーファミリーの登録者数1000万人を目指しています。最初にID登録をしなければいけませんが、興味のある方はぜひアプリをダウンロードしてみてください。
今はとにかくサッカーの仕事ばかりですが、中村憲剛として表に出ることだけではなくて、サッカーの裾野を広げるための裏方的な活動もけっこうしています。でもこの前、山根視来に「SNSが宣伝ばっかりでつまらない」と言われてしまいました…。これは刺さりましたね。意外とまだ刺さったままで抜けてません(笑)。告知専用でSNSを使っているわけではないんですが、多くのお仕事をさせていただいてるので、どうしても皆さんに知ってもらいたいことが多くてですね…(汗)。それだけ宣伝しなければいけないものがあるということでお許しください(笑)。
今年もサッカーを広めるという観点での活動も多くさせてもらい、いろいろな現場や裏側を見て改めて大変だなと感じます。特に今回のワールドカップですね。多くの人たちが熱狂し興奮し一喜一憂した1ヶ月は、僕も解説者としてまるまる楽しむことができました。いやー、しかし疲れましたね!大会を総括したものはいくつかの媒体で書かせていただいたので、是非そちらをご覧いただければと思いますが、現役時代とは違い、過去1番ちゃんと楽しめた大会だったと思います。今回はNHKさんで解説者として起用していただきましたが、本当に多くのスタッフの方たちが、日本の戦い含めて大会を盛り上げてくださいました。これは現場にいた現役時代では絶対に感じられなかったことで、改めてこれだけ多くの方たちが日本代表含めてサッカーを伝えたいと思ってくれているということを、サッカー関係者として本当に嬉しいですし、改めて感謝したいと思います。
2021年の活動を評価していただいての2022年だったので、今年も多くのお仕事をいただいたことに感謝し、すごくやりがいを感じながら今年も楽しくお仕事させていただきました。思い返すと現役引退直後の2021年はすべてが未知の世界だったので、体当たりで何をやるにも全力でした。全力でやったことで僕自身も大きな刺激を受けましたし、経験できたからこそ、その1年目を経て2年目に何をするかを整理して2022年を迎えることができました。僕の1年目を見てオファーしていただいたお仕事もあるので、サッカー人としてだけではない面も広がったのかなと思っています。いろいろな世界を知って、自分が何をすべきかがより明確になってきました。準備という点では指導者ライセンスもひとつ進み、今年度でできる範囲の選択肢を広げることはできたと思います。
一方で、解説者としては頻度が減ってしまいました。解説者を務めるにあたり、自分のなかではやるからには両チームの2、3試合前から観て分析して試合に臨みたい、中途半端にならないようにしたいということもあり、オファー自体はたくさんいただいたのですが、今年の稼働を考えた時に、分析をする時間が昨年よりも取れなくなってしまったために、泣く泣くお断りさせていただくこともありました。今は代表関連やフロンターレの試合、中央大学、アカデミーと、観るものが更に増えてしまいました。正直な話、指導者と解説普及者としてできることなら体がふたつ欲しい(笑)。
その中でも2022年は天皇杯決勝やルヴァンカップ決勝、ワールドカップのドイツ戦のスタジオ解説などを務めさせていただきました。昨年の今頃に「自分がしゃべりたいことを思いつくままに口にしていたことが反省点である」と書かせていただきましたが、2022年はその反省を自分なりに生かそうと、実況の方や他のゲストの方とうまくコミュニケーションを取りながら、ボリュームやテンポを考えながら話すことを心がけていました。正直、2021年は引退直後でもあったため力が入っていたと自分でも思います。そういう点で言えば、今年はいい意味で少し力が抜けたんじゃないかなと思います。
1年のまとめとしては2022年も周りの人たちに本当に恵まれて、とてつもなく充実したいい1年だったなと思います。現役を引退して2年目、「ホップ・ステップ」ですよね。1年目から確実に上積みがあって、いろいろな経験をして幅も広がって、今は地面を踏みしめて力をためている時期というか、来年ジャンプするかどうかはまだわかりませんが、多くの蓄えができた1年でありました。1年目は何もわからなかったことに加え、全力投球し過ぎて視野が狭くなったことで、見えていなかったものがたくさんあったと思いますが、2年目は少し目線が上がり、視野が広がったことで現役時代では感じられないことがより増えて、何度も言いますが本当に勉強になりました。マイナスになったことは間違いなくひとつもなくて、指導者、普及活動、メディア出演と自分なりにレベルアップできたと思います。
2022年の中村憲剛に関わってくださったみなさん、応援してくださったみなさん、本当にありがとうございました。この年末年始、まずは昨年と同じように中村憲剛の2022年をしっかりと精査整理をして、2023年に何をするかをじっくりと考えたいと思います。2023年に向けた下地も作られたと思いますし、自分なりのイメージはある程度浮かんでいます。これからの中村憲剛も応援してくれたら嬉しいです。2023年も何卒よろしくお願いします!
読んでいただきありがとうございました。
それではみなさん、良いお年を!
中村憲剛