【Voice!】大島僚太「自分自身と向き合う」
──2024年もいろいろな出来事がありました。大島選手にとってどんなシーズンでしたか?
「2024年はクラブの了承を得てオフシーズンに新しい調整の仕方にも取り組んだり、自分なりにいろいろなものを試しながら過ごした1年でした。そういう意味では自分自身に集中することはできたのかなと思っています」
──2024年のフロンターレは新しい選手やコーチングスタッフが加わり、シーズン途中にも選手の入れ替わりがありました。振り返ってみると変化が大きいシーズンだったと思いますが。
「そうですね。会話のなかで『いままでのフロンターレってどんな感じだったの?』と聞かれることもありました。言葉で表現するのが難しいんですが、チームとしてなかなか結果につながらない現実があって、半年ぶりに復帰したとき僕個人としてはもっと前に進んで行こうよと感じる部分もありました。フロンターレとしてどういうサッカーをするのかという軸はぶれてはいけないと思います。そういう意味では、いままでチームの原点だと思ってやってきたものが少しおろそかになっていたのかなと。もちろん成長するためには積み上げて壊すことの繰り返しも必要ですが、いま思えば自分のなかでバランスをとることに逃げていた部分があったのかなって感じます」
──そういった変化のなかでチームのアイデンティティを保ち続けることの難しさを感じたシーズンだったのでしょうか。
「『止めて蹴る』というワードで勝てるわけではないですけど、どんなサッカーをやろうが、どんな選手の特徴があろうが、最低限必要なレベルがあると思っています。いままでは新しくフロンターレに入ってきた選手たちが、チームの基準に対して難しさを感じることが多かったと思います。その苦しんでいる姿を見て僕自身ももやもやしていて、それぞれが個人の特徴に自信を持ってのびのびプレーできる空気が作れたらいいなって思っていました。でも今年に関して言うと、新しく入ってきた選手が難しいと感じたシーズンではなかったんじゃないかなって。ということはチームに長くいる自分自身がもっとレベルアップしなければいけない、選手が入れ替わって個々の特徴もあるからという言葉は逃げでしかないなと考えるようになりました。チームとして続けてきたものと新しく採り入れるもののバランスというか、兼ね合いが難しかったシーズンだったのかなと。フロンターレのベースの部分に関しては個人個人で突き詰めていくものだと思います。もっとシンプルに止めて蹴るを追求すれば見えるものが変わったのかなとか、自分自身も本筋から少し脱線してしまったかなと感じています」
──チームとしての戦い方を徹底するという意味では、近年は戦術面がより緻密になってきた印象があります。
「そうですね。確かにここ1、2年は選手からもやり方を求める声が多いと思いました。なので戦術面のアプローチの比重が増えたと思います。風間さん(風間八宏監督/2012年〜2016年)と同じくオニさん(鬼木監督/2017年〜2024年)もボールを失わないことがスタートという考えがあったと思いますが、その塩梅が難しそうだと思いました」
──2024シーズン限りで鬼木監督が退任されました。大島選手がプロ入りした2011年当時、鬼木さんはトップチームのコーチを務めていました。
「僕は高校生の頃にオニさんと初めて会って、こんなに動けてこんなに上手なコーチがいるんだって本当にびっくりした記憶があります。それから技術だけではなくてサッカーに対して熱くて厳しくて、何かに偏っているわけではないのが自分のなかでは結構な驚きでした。今シーズンが終わったときに、まずそういったことを思い出しました」
──クラブに長く在籍されていたので、フロンターレに長くいる選手はそれぞれ思いが深いのではないでしょうか。
「僕の場合は…、そうですね。当然感謝の気持ちでいっぱいなんですが、それよりもたくさん迷惑をかけたな、迷惑をかけっぱなしだったなって改めて思いました。僕からするとオニさんはコーチ時代も監督時代も変わらなくて、誰に対してでもそうですけど選手の成長のために思ったこと、感じたことをしっかり言ってくれる人でした。ボランチでプレーするうえで必要なことをたくさん教えてもらいましたし、プライベートで家族と一緒にいて街中でばったり会うこともあったりして、公私ともにたくさん話をしてもらいました。僕が代表に入れていたとき、メンバー発表されたあとに怪我で行けないということが何度かあって、そのときオニさんに呼ばれていろいろ話をしたことがありました。それは単なる励ましだけではなくて、僕のことを思っての言葉もたくさんあったと思います。
でも結局、オニさんの最後の試合も怪我でピッチに立てなくて迷惑をかけ続けたし、本当に申し訳なかったなって。いろいろなタイミングでいろいろな言葉をかけてくれたのに、その思いに応えられなかったという気持ちです。ショウゴさん(谷口彰悟)が移籍するタイミングで話をしたと思うんですけど、チームを引っ張ったりまとめてくれていた人が抜けた穴を既存の選手たちでやっていくんだっていう覚悟みたいなものがあって、それをオニさんの最後の試合で思い出して感情的になってしまいました。ただ、いまはオニさんのチームと対決するために頑張って自分の体を克服しようというモチベーションにつながっています」
──長谷部監督の就任が発表され、2025シーズンに向けたチーム編成が進んでいます。
「2024年の経験をチームとしてネガティブにとらえるのではなくて、次に生かすためにそれぞれが頭を整理するべきだと思います。僕は僕でしっかり自分の体と向き合うのは変わらないです。どういうサッカーをするかは新しい監督が先頭に立ってくれると思うので、あとは選手が積み上げていかないと。サッカーはやり方も大事ですがボールを扱うスポーツなので、ボール扱いの基準は選手たちでも高い基準を作って取り組んでいくべきだと思います。だからやり方うんぬんに逃げるんじゃなくて、ボール扱いは自分たちで基準を高く持って取り組まなければいけないと思っています」
──大島選手自身の来年の話は発表されていないですが(2024年12/27現在)、2025年でプロ15年目のシーズンを迎えます。
「いい年齢になってきたと思います。周りの選手で言えばサッカーを辞めている人もいたりして、そういう年齢に差しかかっているのは間違いないです。ただ僕自身としてはサッカーを辞めたいという感情はまだないです。やっぱり目の前にソンリョンさん(チョン ソンリョン)やアキさん(家長昭博)、ユウさん(小林悠)、2024年で言えばマルくん(丸山祐市)もいて、上の選手たちをお手本にしながら見て学んだり、話を聞いて学ぶことはまだまだあると思っています」
──高校からプロに入ってここまで続けること自体が大変なことだと思います。いい時期もあれば苦しい時期もあったと思いますが。
「うーん、難しいですね。ここまでは。正直、辛いことも多かったですけど、長く現役生活ができる選手は限られているので羨ましく思っている人もいるだろうなとか、いろいろな思いがありながらもこうしてサッカーを続けることができています。2024シーズンに関しては同学年の武藤選手(武藤嘉紀/神戸)がJリーグMVPを獲ったり、宇佐美選手(宇佐美貴史)がベストイレブンに入ったりと、頑張って認められている選手がたくさんいます。それこケンゴさんやアキさん、ユウさんが30歳を超えてMVPを獲っているので、自分が現役でプレーしている間に認められる選手になりたいなと思ってます」
──2025シーズン、いい年にしたいですね。
「そうですね。みんなで前向きに取り組みたいと思います。ネガティブになろうと思えばなれることはあるでしょうけど、最後にオニさんがサポーターの皆さんに向けて選手をブーイングするのではなくてつねに支えて欲しい、それがクラブの誇りだといったメッセージを残してくれました。次にオニさんと会うときはライバルチームの監督ですけど、最後にああいう言葉を残してくれるのはすごく嬉しいですし、僕らが強くなるためのヒントでもあると思います。これからもいろいろなものを吸収して、みんなで強くなっていきたいです。やっぱり鹿島戦に出場したいですよね。素晴らしいチームだと思うので。まずは年末年始ゆっくり休んでリフレッシュして、また新しいシーズンに臨めたらと思います」
(取材・麻生広郷)