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中村憲剛が2021年上半期を振り返る(後編)

川崎フロンターレnote部の場をお借りして、私、中村憲剛の2021年上半期を振り返りたいと思います。

今回はその後編です。

現役を引退してから、メディアに出演させていただく機会が増えました。

サッカー選手の時ならゲストとして扱ってもらえますが、今は「中村憲剛」という名前だけで勝負しています。発言ひとつで評価が変わってしまう可能性があるので、自分の立ち位置をより考えるようになりました。

試合の解説をさせていただくときも頭をフル回転させています。言葉が長くなりすぎてもダメですし、短くすることで自分が言いたいことを言えないのもストレスになってしまいます。収録ではなく生放送、生配信のお仕事も増えているので、言ってはいけないワードも含めて言葉のチョイスも気をつけなければいけません。思考の瞬発力に関しては、現役時代と同等ぐらいのものを求められると感じています。

解説のオファーをいただいたからには、試合を観ている人がもっと聞きたいと思えるような解説を目指しています。「何故そうなるのかを聞きたい」というみなさんの声に応えられないと、自分が解説をやる意味がないと思っています。期待に応えなければいけないという思いはすごく強いです。

去年までは、Jリーグであればフロンターレが次に対戦するチームの試合を重点的に観ていましたが、今は全体を把握するようになりました。そうすることで、フロンターレと他のチームの違いがより明確に見えてきました。今までフロンターレを外から客観的に見ることがなかったので、そこはすごく新鮮です。

今のところ毎週この曜日のこの時間に必ず出るという番組はない(出演させてもらっている「やべっちスタジアム」は3週に1度です)ので、基本的には新しい現場に行くことが多いです。なので、日々起こること自体が新鮮です。時間帯も、朝にお仕事が入って午後がないときもあれば、その逆もあります。本当に日々バラバラですね。

現役時代は試合スケジュールを基準に空いているときに出演させていただきましたが、今はオファーに合わせて時間やスケジュールを調整するようになりました。正に真逆ですね。「来週のこの日いけますか?」という近々のオファーをいただくこともあれば、ありがたいことに10月、11月、12月といった先のオファーもいただくこともあります。

ですから逆に自分のスケジュールの都合で、いただいたオファーをお断りせざるを得ないときもあります。これは本当に心苦しいです。

自分としてはやりたい気持ちはあるけど先に予定が入っていたり、今やっている仕事の予備日だからリミットを設けなければいけなかったり。そこはマネージャーと相談しながら決めていますが、泣く泣くお断りすることが増えてしまっていることは申し訳なく思っております。

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その一方で、現役時代と違って朝昼晩関係なくお仕事が入ることで、プライベートの時間が減る時は減るようになったので、スケジュールを組み立てる際には家族との時間をしっかり確保させてもらうようにしています。

子供の運動会や発表会といった行事がある日をあらかじめ押さえられるようになったのは、現役時代との大きな違いですね。やはり家族との時間も大事にしたいです。そこはどうか理解して欲しいという思いと、お仕事を断らなければいけない苦しさが同居しているんです。これは本当にジレンマです。

でも、こうしてお仕事をいただけるのもおそらく今だけなので、今、目の前のことに全力で取り組み、期待に応えたいという思いは現役時代と全く変わらないです。クライアントさんに中村憲剛に頼んで良かったと思ってもらいたい。だから現場に行って出番の時だけ出るということではなく、できる限り事前の打ち合わせに出させていただいたり、仕事内容によってはその前の準備段階から携わらせてもらうこともあります。

結局そこで適当なことをしてしまったら、次の仕事は来ないと思っています。それも現役の時と同じですよね。いい加減なパフォーマンスをしたら、次は使われませんから。

例えば2人候補がいて、同じようなネームバリューで同じような金額だとしたら、当然熱心に仕事に向き合う方を選ぶと思います。それは現役時代から考えていたことです。同じポジションで同じぐらいの力量の選手がいたとしたら、「憲剛を使った方がチームの勝利に貢献できるよね」って思ってもらえるよう日々努力をする。考え方は一緒です。

現役時代、試合に出るため、レギュラーになるため、どんなパフォーマンスを出せばいいか自分やチームを分析して考えてきました。今はクライアントさんやメディアの担当者の方からオファーをいただいたときに、自分に何を期待してのオファーなのかをしっかり理解するように努め、どうすれば番組の収録や撮影がより良いものになるかを考えています。

数多くの候補がいる中で自分にオファーをかけていただいているわけですから、「なんだ憲剛に頼まなければよかった」と思われないようにしないといけません。ですからスケジュールが合わずに泣く泣くお断りする際も、自分を使いたいと思っていただいてのオファーなので、本当に申し訳ないという気持ちを込めて伝えるようにしています。

今後の展望は…、ないです(笑)。

というか、今は正直考えていません。まずは目の前の仕事に全力で取り組むだけです。この半年でいろいろなものを経験して、学んで、吸収させてもらっています。当たり前ですが、世界は広いと改めて思いました。基本的にはサッカー界での活動で中村憲剛という肩書きはありますが、社会の大海原に出た何者でもないひとりの大人でもあります。そこでちゃんと仕事をしなければ次はない。そう思っています。

ちょっと硬い結論としては現役時代と同じで、全力で楽しくやらせてもらっています。日々トレーニングをして、週末の試合に向けて準備をして、結果を出して成長して得るものがあって、先に進む。結局そうすることで自分が進む道が見えてきたので、おそらくこれから先も一緒だと思います。

だから選択肢をひとつに絞らず、全ての選択肢に対してしっかりを準備しておいて、求められた時にしっかりと準備して来たものを出せるよう、期待に応えられるよう最善を尽くしたいと思います。

以上

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(2020年12月31日、現役最後の麻生グラウンドから約半年たって)


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